紺ガエル日記 2006年5月21日 那須再訪

走行距離 31,020km

今年は雨の多い5月だったが、今日は久しぶりに快晴。サスペンション交換をしてから遠出らしい遠出をしておらず、全くもってポルシェHPの主宰者とは思えない状況になっていたのも気になっていて、久し振りに那須を目指すことにした。というのは半分嘘で、鹿の湯に再訪したかったのと、旨い那須牛のステーキが食べたくなったのが残り半分である。

何時も通り首都高代々木入口から加速して4号線に合流。明らかにロールが減少。上りの緩やかな右カーブをかなり加速しながら駆け上がっていくが、挙動が安定している。
ハンドルが二まわり小さくなった感じがする、と以前書いたが、各所の剛性が上がっているために若干ハンドルが重くなった、気がする。ただしステアリングの遊びは小さくなった。ブッシュなどがヘタっている状態でいくらアライメントを調整してもやはり無駄だったことが高速で直進安定性が圧倒的によくなったことでわかる。高速をそれなりのスピードで運転していることが凄く楽になった。また前後の荷重移動も少なくなったので、ロールの減少と合わせてパッセンジャーに不安を与えることが少なくなった。

家を9時過ぎに出て、11時過ぎには鹿の湯の駐車場に車を止めていたので、かなりのハイペースだった。最近GPS対応のレーダー探知機(勿論LHシステムなどの設置地点情報もインプットされている)を購入したので、神経を研ぎ澄ませながら走ることは減ったのだが、過信は危険だということを思い知らされる出来事が道中一度だけあった。

栃木ICを過ぎるあたりで、バイクを抜き去る機会が増えてきていたのだが、一台のバイクがかなり執拗に追いかけてきた。交通量はあまり多くなく、付いて来られるのも何だかいい気分では無いので、時速ふわわkmを少し上回る速度で振り切ろうとしたがぴったり付いてきた。特に煽ってきている訳でもないことが判ったので、それなりのスピードのまま巡航していたら、「速度自動取締機設置路線」という看板が2回現れた。その割にはレーダー探知機はうんともすんとも言わないので、おかしいなと思いながら宇都宮ジャンクションを通過しようと思った。分岐の所にNシステムがあるなあ、と思っていたら、分岐すぐ横の左側に最強LHシステムらしきカメラが3つ。そんな馬鹿な、と思い少し先の路面を見ると、3車線の全てにくっきりと白い撮影箇所を示すマーキングが。慌ててパニックブレーキを掛けてやり過ごしたのだが、メーター読みで時速110kmまで何とか減速することが可能だった。オービスに設置されていた赤色灯が点灯しなかったので、何とか難を逃れたことがわかった。後ろについてきたバイクには悪いことをしたと思う。
カーナビに慣れ過ぎてしまうと目的地を探す野生の勘のようなものを失うが、レーダー探知機に頼りすぎると危険なことを思い知った。

少し話題が逸れるが、先週会社で相当盛り上がっていたのがYouTubeのこの画像。恐らく90年代前半と思われるが、ほぼ全線渋滞している首都高を、渋谷から錦糸町まで12分で駆け抜ける基地外バイク野郎が撮影した動画である。僅か1mも無い大型のトラックとトラックの間を80-100km/hですり抜けて行くなんて、狂気の沙汰である。エンターテイメントで見るのであればスリリングと片付けられるが、実際に横をすり抜けられると思うとちょっと耐えられない。一度ご参考までに見てみてください。

鹿の湯は半年振り。昨年11月に来たときは工事中だった遊歩道と、温泉のすぐ横の駐車場が完成していて、便利になっていた。鄙びた湯治場だったはずだが、観光客もかなり多かった。
以前鹿の湯がどんなところか書いたので、ここでは詳しくは書かないが、今回は46度と48度の湯船を中心に攻めることにした。その二つの湯船は浴場の一番奥にあり、地元の方々の憩いの場となっていて、よそ者が入っていきにくい雰囲気がある。どこの場所にも流儀というものがあるはずなので、暫く手前の44度の湯船に入りながらローカルのルールを把握してから入ろうと考えた。

やはり湯守りのようなおじさんが数名いて、46度、48度の湯船の周りで地元の人たちに声を掛けながら火照った体を冷ましている。本当に茹でたカニのように体が赤くなっているおっちゃんもいる。みんなペットボトルの中に飲み物を入れて持ってきており、MyひしゃくやMyたらいは勿論、My砂時計を持って来ている。いきなり48度に挑戦するのもどうかと思われたので、取りあえず46度にちゃんと長いこと浸かっていられることを見せることにした。

46度は思ったよりも楽勝だった。でも相当熱いのだが。湯船に誰も入っていないタイミングを見計らって、滑稽だが周りに座っているおっちゃんたちに敬意を示すため、フリ●ンで手刀を切りながら湯船に入った。ここで弱音を吐くと48度に入れないので、48度の湯船に地元の人が3分間入るのよりも先に入って後に出ることにした。やはり奥の二つの湯船は、観光客はほとんど入ってこない。最初は楽勝だと思っていたのだが、湯をかき混ぜるとどんどんピリピリ痺れてきた。だがどちらかというとまだこの温度だと6割快感、4割苦痛という感じである。5分ほど入って、一度湯船から出て入浴前に自動販売機で買ったスポーツドリンクをぐびぐび飲むと、体中から汗が吹き出した。

ちなみに鹿の湯がどれだけ強酸性かというと、温泉で使ったタオルは帰宅したときには繊維がぼろぼろ、直接噴気に当たる訳でもない受付のコインロッカーが腐食してぼろぼろになっているほどのものである。これだけ強いお湯で、高い温度なので、よっぽど気を遣わないとすぐ湯あたりになってしまう。そのために地元の人たちは、かなり厳格な暗黙のルールを共有し遵守している。しかし私のようなよそ者にはそれが存在していることそのものは以前からわかっているのだが、何がしてよくて何がしてはいけないのかわからない。

46度の湯にもう一度浸かっていると、どうやら気合が入っていることが伝わったのか、湯守りをしている一番偉そうな地元のおじさんに「男なら48度に入ってみろ」と言われた。何度か訪問しているが、まだ一度も48度には挑戦したことがないと答えると、「やっぱり地元の人間でも水持参で来ないとなかなか楽しめない」と言われた。私はペットボトルを持って入っていたのでその旨伝えると、初めて来たわけではなく、48度の湯に挑戦しようと思ってきていることがわかったらしく、「遠慮せずぜひ入って帰れ」とのこと。ようやく地元の人に認められたのですこし嬉しくなった。

46度の湯に浸かった余勢を駆って、少しだけ体を冷ましてすぐに48度の湯に入ろうとしたのだが、一番偉そうなおじさんに止められた。やはり私のわからない暗黙のルールに抵触してしまったらしい。何でも、湯あたりを防ぐためには汗が吹き出した体のまま入るのではなく、一度汗を手拭いで拭いて、汗が引くのを待ってからでないといけないらしい。素直に教えに従い、周りの人と同様に床にぺたんと座って、体を拭いながら体を冷やすことにした。暫くすると汗も引いたのだが、また許しも無く入ると教育的指導を食らいそうだったので、ちょっと様子見していたら、ついに「兄さん入れ」とお許しが出た。

自意識過剰かもしれないが、明らかに湯船の周りのローカルは「こいつは48度にちゃんと入れるのか」という好奇の目で見るともなしにこちらを見ている。ちなみに私が入っていた小一時間ほどの間に、観光客で48度にトライした人は私だけである。ローカルだけでなく、少し離れたところにいる観光客の目も恐らくこちらを見ているのだろうな、と生まれたままの姿(35歳にもなろうというのにちょっと厚かましいが)の背中に視線を感じながら、思い切って未知の世界に文字通り足を踏み入れることにした。

初めての48度のお湯は、熱いというよりビリビリする。何とか入れるのだが、少しでも湯の中で体を動かすと、軽い電気を流されたかのようなショックが襲う。指先などの体の末端を湯に浸けると、正座で痺れた足の指をつねられているような不思議な感触がしてくる。地元の人たちは48度の湯に入っているときは何故だか口数が増えていたが、恐らく話をしないと、気がまぎれずに時間の経過がとんでもなく長く感じられるからではないかということがわかった。当然よそ者の私には話し相手もいないのだが、件の湯守り頭のおじさんが、隣の人と話しながらちらちらこちらを観察しているので、「ほんと熱くて死にそうです」と言ったら笑っていた。折角地元の人が3分計で時間を計ってくれたのだが、残念ながら3分間入っていることは出来なかった。でも2年越しで48度の湯に浸かれたので、かなりの充実感が得られた。

風呂を上がると、私の体も茹で立てのタラバガニもびっくり、というほど紅色に染まっていた。この写真ではちょっと判りにくいかもしれないし、汚い足を見せて恐縮だが、風呂を出て10分程度経ってもこんなに真っ赤だった。48度の湯に入れたこと(物理的に入れたということと、地元の人に許されたこと)は、ここ暫くで最も充実感が得られたことだった。

ほとんど「日本湯巡り紀行」のHPみたいになってきているが、鹿の湯を出て中低速コーナーの連続するトリッキーな那須甲子有料道路をハイペースで走った。ところどころ他の車に行く手を遮られるが、ツイスティな登り傾斜の強い道を上がると、カレラ4S特有の前輪が路面を引っかき、重量物を積んだ後輪が地面を蹴立てる感じを強く感じることができて楽しかった。展望台からは少し霞がかってはいるものの、太平洋まで見渡すことが出来た。

昼食も実はかなり楽しみにしていた。このHPには書かなかったが、前回来たときは那須IC近くの「桜」というステーキハウスに立ち寄った。まあまあ美味しかったのだが特に強い印象は残っていない。何処に行くかあまりちゃんと考えていなかったのだが、那須甲子有料道路から那須街道に出る間に「安愚楽牧場(あぐらぼくじょうと読む)」という看板が見えて、そこが直営している「あ・かうはーど」というステーキハウスがあるというので、そこに行くことにした。

那須街道沿いのそのレストランは、見た目がかなりファミレスチックなのでちょっと抵抗があったが、店に入ると入り口すぐの正面でシェフ(というよりコックさんといったほうがしっくり来るが)が肉を焼いていて、その右側ではショーケースに物凄い霜降りの和牛が売られていたので、食欲をそそったのでここでランチすることにした。

オーダーしたのは国産和牛A-5等級のサーロインステーキとA-3等級のオーブリオン。どちらも180gずつという馬鹿げたオーダーの仕方をした。結論から言うと、どちらも旨かった。直近行った西麻布のPorterhouse Steaksは悪夢のようなサービスだったが、ここのサービスはやはり少しファミレスチックではあるものの、一生懸命やろうとしていることに好感が持てた。好みを言うと、もう少しサーロインの脂身を焼いてくれたほうが香りが出てよかったのだが。



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