日々雑感 2004年10月

あのメルセデスの変節



先日クラウンアスリートが気になるという駄文を書き連ねたが、今でも少し気になっていて、個人タクシーでアスリートを見ると乗ってみたい誘惑に駆られる。ただし、私の想像する最大の欠点は、高速道路では恐らくベンツやセルシオには絶対に道を譲ってもらえない気がすることである。アルファでも譲ってもらえないが。
セダンが気になるようになったのは、アルファ号では3人でゴルフに行くと結構圧迫感が強いこと(特に後部座席、なぜなら後部座席の片側を倒さないとゴルフバッグが載らないから)、刺激が必要でないときにリラックスして運転したくなってきたからである。アルファはいい車で、ツインスパークの音を聞きながら千葉の田舎を走っていると、テンションが上がって気持ちいい。朝元気なときだととても素敵だ。パワーバンドに乗っけて走っているときは凄くいいのだが、静かに走りたいときには少し非力だ。同じエンジンの音も、疲れているときは気に触ることがある。ハンドリングはとてもクイックで楽しいが、ハードなブレーキングでABSが作動すると、突然ペダルが底まで抜ける。高級感を求める車でないことは重々承知の上で購入したが、もう少し安寧な気分で運転したくなるときがあるというのも事実だ。

そんな中、家で最新号のENGINEを見ていたら、なんとメルセデスベンツからクラウンアスリートそっくりのライトの形状を持つCLSが発表されたとの記事が出ていて、びっくりした。それよりももっとびっくりしたのが、無骨なイメージのあるメルセデスが、「甘い生活」をテーマに「無駄を楽しむ」コンセプトでなんと4ドアクーペを作ったという事実である。機械としての性能と機能を最優先し、「最善か無か」というスローガンの下で車を作っていたメーカーが、ついに「甘い生活」をテーマにしたのだ。方向性は正反対だが、マセラッティが軍用車を作るようなものである。素晴らしいというか、恐ろしいというか。時代は変わるものである。

文句があるわけではなく、CLSは素直にかっこよい車に思えた。こちらもクラウンと一緒で、Sクラスに乗っている層よりも10歳程度若い、45歳程度の人をターゲットとして作った車らしい。SLはとても魅力的なデザインだが、CLSのほうがさらにエレガントかつ実用的だ。後部座席は快適とはいえないかもしれないが、エマージェンシー用ではなく恐らく4人乗車でゴルフに出かけても問題ないように思われる。ルーフのテールにかけてのラインが、ジャガーを思わせる湾曲ぶりである。また、インテリアが高級感あふれ、スタイリッシュであることも、とてもアピーリングである。もともとはEクラスをベースに作られている車だが、Eクラスの無骨さをSクラスのインテリアでカバーした、そんな印象を受けた。間違いなくBMW6シリーズは意識されているのだろう。日本で言えば、LEONやBRIOを毎号購入する「パチモンイタリア人風チョイ悪オヤジ」(書いていてかなり寒い)層にアピールしたいのだろう。クラウンだとチョイ悪オヤジなんだか本当の極道だかヤンキーなんだか区別がつかず、関西方面のホテルやゴルフ場の車寄せなどでは必要以上にVIP扱いされてしまう可能性があるが、メルセデスであれば問題なかろう(駄目か?)。

すでに欧州では発売されているとのことなので、メルセデスベンツのHPでチェックしてみた。イギリスのサイトにはまだ紹介されていなかったが、ドイツのサイトでは詳細がアップロードされていて、久しぶりに読むドイツ語に苦労しながらも概要がわかった。
 
  余談だが、ダイムラークライスラーの直近の決算は、メルセデスベンツ部門は不調で前年同期比で営業利益が半分以下に落ち込んだ。そのせいかかどうかわからないが、海外のメルセデスベンツのサイトを覗くと、若目の顧客層に訴求しようとしている姿勢が見て取れる。高級車で培ったブランドイメージと、コストセーブを伴ったわかりやすいプレミアム感の演出で、4-5万ドル程度の車を利益率を高く設定して売ろうとしているのかもしれない。ジャガーがモンデオベースでXタイプを作ったように。

ENGINE最新号には、私の大好きな清水和夫氏による997のインプレッション、F430のフィオラノでのテストなど、魅力的な記事がたくさん並んでいる。清水氏のドライブによる997の記事扉の写真は、あまりに美しい。しかし、私が繰り返し読んだのはCLSの記事だった。つい先日33回目の誕生日を迎え、私はもう刺激よりも安寧を愛するようになったのかもしれない。

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