紺ガエル日記 2003年11月8日 久しぶりの奥多摩

走行距離 23,505km

11月とは思えないほど暖かい週末だったので、愛車のボディカバーを引っぺがして奥多摩周遊道路へ紅葉見物がてらワインディングを走りに行くことにした。中央高速を上野原まで走り、そこから入り口のゲートまで小一時間。Z3に乗っているときに、良く走りに行った道である。タイトなコーナーと中速コーナーが中心で、非力なZ3には上りはきつく、2速でガスペダルをべた踏みしてもあまり上っていってくれなかったことが記憶によみがえる。紅葉のシーズンで、ファミリーカーが多いことが予想されることと、タイヤが既に1万キロを超えていること、加えて最も重要なことだが奥さんを乗せていることで、全開で走るというよりも季節感を楽しみながら、ちょっと踏んでみるつもりで出掛けた。
久しぶりの中央高速は、案の定渋滞していて、出掛けるのが遅かったために着いた途端に日没などということにならなければいいのだが、と念じつつ、上野原に着いたときにはもう3時を回っていた。高速を下りてからは交通量は思ったよりも少なく、奥多摩周遊道路を目指して山里を気持ちよく走っていった。途中で、電光掲示板が奥多摩周遊道路が斜面崩落のため都民の森より先は全面通行止めであることを告げていた。久しぶりに来たのでぜひ山梨のほうまで抜けてみたかったのだが、仕方がないので都民の森を目的地にすることに方針転換した。

多摩の山は、部分部分で色づき方が異なっていて、不思議な気になった。黄金色に光る大きな銀杏の木がお寺の境内にすっくと立っていたり、一本のカエデの木が緑から紅色にグラデーションをつくっていたりするところもあれば、目にまぶしい緑の木があったりして、それぞれである。やはり寒暖の差が大きくないと、山全体が紅葉しないのかと不思議に思った。

愛車は相変わらず好調である。2速は3千回転を超えると極めてトルクフルで、フラット6のエンジン音も回転数が上がるとともに散漫に聞こえていた音がだんだんと意思を持っているような響きになる。奥さんがうつらうつらしているのをいいことに、若干ペースを上げてコーナーに進入し、クリッピングを過ぎた後でガスペダルを踏み込むと、若干前輪が車を引っ張る感じがしながらも荷重が乗った後輪が車を押し出す、というカレラ4Sならではのコーナリング感がとても楽しい。上手く表現できないが、キックバックというほどでもないがその瞬間に若干ステアリングに伝わってくる感触が微妙に変化して、それを微調整をする行為がとても楽しかった。RRのポルシェに乗りなれているわけではないので、これがカレラ全てに共通するかどうかはよく判らない。

しかしいつも思うことだが、ローリング族対策で路面にバンプを作るという行為は、極めて車中心の発想にしか思えず、バイクに乗る人たちを危険に晒していることを承知の上でやっているのだろうか。奥多摩周遊道路へ向かう道にも多く作られていて、乗り心地は極めて悪いし、普通にバイクに乗っている人たちもかなり注意をしないと、夜であれば簡単に転倒してしまいそうである。もちろんローリング族の肩を持つ気はないのだけれど、あんなに物理的に危険な大きな段差を作らなくても、もっと危険を伴わない何か別の心理的な嫌がらせをすることでローリング族対策になるのではないかと思った。

通行止めのせいで、当初考えていたよりも短いドライブになってしまったので、何となく消化不良となり、帰りは奥多摩から横浜まで出て買い物をして帰ることにした。行きと違って帰りは八王子まで出て帰ることにしたのだが、先行したのが型落ちのインテグラタイプR。こちらは前述したような理由であまり張り合う気はなかったのだが、先行車が一生懸命走るのでついて行くことにした。タイプRは、後ろから見ているととても鼻先が軽そうで、思ったとおりの方向を自然と向くような感じだった。気温も一時よりは下がって、愛車の機関系は絶好調なのがよく判り、ついて行くのがとても楽しかった。先行車は全開走行するわけでもなかったので、中速コーナーを2速でエンジンを目一杯使って走っていくのが気持ちよかった。

八王子市内の渋滞を抜けると、案の定中央高速の上りは渋滞していた。高井戸から環八を使って第三京浜に乗り、都築の近くの破壊されたオービスが引き続き新たに設置されていないことを確認して、山下まで向かう途中、横浜公園の入り口付近の反対車線で車が全焼している場面に出くわした。トンネルの中は刺激臭のする煙が漂っており、反対車線には消火活動をしている1台の消防車と、今まさに現場に到着しつつある10台ほどの消防車が見えた。減速しながら見ていると、白いセダンのピラーが完全にくの字になっていて、消火剤まみれになっていた。乗員は無事だったのかは判らない。後続車は、消防車の邪魔にならないように路肩に何台も止まっていた。もし炎上する車の中に人がいて、後ろで路肩に車を寄せる以外に何も出来なかったら、どう感じるのだろうか自問した。かなり嫌な想像である。

買い物を済ませ、何時も通り中華街で食事をし、自宅に帰る道すがら事故現場を通ったが、4時間後でもまだ1車線は規制されていて、首都高速公団のパトロールカーが消火剤を洗い流していた。結構大きな事故だったのだろう。
首都高も湾岸線だと直線番長状態になってしまうのだが、横浜から帰るときは羽田線のほうがスリリングで面白い。生麦ジャンクションの先、羽田のあたり、平和島の3箇所にオービスがあるのが判っているので、結構楽である。土曜の夜だが上りは交通量も比較的少なく、4速のパワーバンドに入ったあたりを上手く使いこなしながらたまにあるコーナーをクリアしていくのも、峠道を走るのと変わらないぐらい楽しかった。やはり4速で踏んでいったときのトルクの太さがアルファとは大違いである。加えてサスペンションの挙動が小さいので、ロールがもたらす恐怖感が少ない。アクセルオフの時はアルファのほうが安定性が高いが。 そこそこ調子に乗って走っているとあっという間に平和島の料金所まで着いたが、ETCのゲートに入る直前に目の前に嫌な光景が広がっていた。飲酒検問である。実は食事のとき奥さんに付き合って味見程度にビールを飲んでいた。アルコールが検出されるほど飲んだわけでもないし、飲んでから時間も経っていたので醒めている自信はあったが、やはり嫌なものである。加えて何が嫌かというと、この季節はこれしかない、という上海蟹を最後に食べたので、口の中がとても甲殻類臭い状態だったのである。ETCレーンから出たときに青い服を着た交通機動隊員に制止され、「飲酒検問をやっています」と告げられた。大体こういうときには「お世話様です」とか「お疲れ様です」と平静を装って(というか今回はあまりやましいことはないので)警察官の目を見て言うに限る。挙動不審で目を合わせなかったり、いきなり逆切れしたりするとろくな目にあわない。機動隊員は窓から顔を車内に突っ込み、検出器を私の顔に当てるので、仕方なく「はー」とやったら、もう一度やってくれ、という仕草をするので、内心鼓動が若干早まったが、もう一度蟹臭い息をおまわりさんめがけて吐き出してやったら、放免された。嫌な仕事だろうな、と奥さんと顔を見あわせた。

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