紺ガエル日記 2001年6月23日 初めての車検、その費用とポルシェの夏場の注意事項
走行距離 11,238km
初めての車検がやってきた。購入が今年の1月だったので、5ヶ月ほどで車検が来たことになる。
購入時に非常に低走行だったため、ポルシェ世田谷の小塚氏は「車検でもほとんどいじらなくて済むでしょう」とおっしゃっていたので、結構安心して車検に出した。出した先はポルシェ世田谷である。
結論。5年目車検の総コストは\211,430也(法定費用込み)。
検査登録印紙代 |
- |
- |
1,100 |
重量税印紙代 |
- |
- |
37,800 |
自賠責保険料 |
- |
- |
27,600 |
小計 |
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66,500 |
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個数 |
部品 |
技術料 |
車検整備 |
- |
- |
45,000 |
機器による検査 |
- |
- |
11,700 |
代行料 |
- |
- |
10,800 |
エンジンオイル補充 |
1.0リットル |
2,450 |
- |
エンジンエアフィルター交換 |
1 |
2,850 |
1,800 |
エアコンフィルター交換 |
2 |
9,900 |
1,800 |
ブレーキフルード交換 |
1.0リットル |
5,050 |
7,200 |
クラッチフルード交換 |
0.5リットル |
2,520 |
1,800 |
ブレーキクリーナー |
1 |
1,000 |
- |
パーキングブレーキシュー分解調整給油(キャリパーボルトは交換) |
4 |
1,200 |
14,400 |
ファンベルトおよびオルタネーターベルト交換 |
2 |
2,800 |
4,500 |
エアコンベルト交換 |
1 |
1,800 |
1,800 |
ハイフレア(発煙筒)交換 |
1 |
660 |
- |
左右F、Rワイパーブレード交換 |
各1 |
6,100 |
900 |
. |
. |
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小計 |
- |
138,030 |
- |
税金 |
- |
6900 |
- |
計 |
- |
211,430 |
- |
さすがに5年も経つと消耗部品の交換には金がかかる。高いなあ、と感じたのはパーキングブレーキの作業料だった。悲しいことに、前からパーキングブレーキは効きが悪かったのだが、先ほど帰ってくるときに上り坂で信号待ちとなり、修理したてだから効きが強くなっているはずと思って少ししかパーキングブレーキを引っ張らなかったら、後ろにずりずり下がってしまった。
ディーラーにもっていくとコストが高い、とはよく言われることであるが、こちらのメカニックの松坂氏はいつも丁寧に、そして誠実に対応してくださるので非常に助かっている。ブレーキホースは5年程度で交換するらしく、本来であれば今回交換のはずであったが、低走行車のためホースはあまり劣化していないために今回変える必要がないと思うのだが、と松坂氏はわざわざ電話をかけてきてくれた。私は安いものだったら早めに交換したほうがいいのでは、と思って値段を聞いたら、詳しくは忘れてしまったが作業量込みで5万円程度高くなるとおっしゃったと記憶している。メカニックの目で見てもまだまだ大丈夫だ、とおっしゃっていただいたので、次回車検時に交換することにした。
前回、オイル交換時にも松坂氏にお世話になり、いろんな事を教えていただいた。今回も、いろいろな質問をぶつけてみた。彼は嫌な顔をすることなく、どの質問にも丁寧に答えてくださった。
質問1.夏場注意するべきことは何か?
空冷エンジンには、熱交換効率の下がる夏は過酷な条件である。基本的に、外気温が30度を超えると黄色信号、32度を超えると赤信号である。暑いときに、渋滞の中、あるいは長時間のアイドリングなどでエンジンルームの冷却ができないというのは、車にとって非常に悪い。エンジン自体はファンがついているので冷却されるが、それなりのスピードで走らないとエンジンルーム内は冷却されない。内部が150度程度まで温度上昇する場合もある。
具体的に何に悪いかというと、以下の事柄があげられる。
第一に、ガソリンはエンジンルーム内までホースで来ても、実際にエンジンで燃焼するのは2割程度で、残りはガソリンタンクに帰っていく。エンジンルーム内での冷却ができていないと、ガソリンがエンジンルームで非常に高い温度に熱せられ、ガソリンタンクに戻っていく。これが続くと、ガソリン全体の温度が上がってしまい、ガソリンは沸騰することはないもののガソリンタンク内での圧力が上昇する。圧力弁があるため、当然のことながらガソリンタンクが破裂することはないが、エンジン内での燃料噴射がうまくいかなくなっていわゆるパーコレーション現象が起き、エンジンが吹けなくなる。つまり、アクセルを踏んでも車はいつものようには進まない。ティプトロの場合は、最悪の場合エンジンが止まってしまう場合もある(なんでMTとTipで違いがあるのかは聞き忘れた)。
第二に、エンジンルームの温度が上昇すると、オイル漏れが発生しやすくなる。温度の上昇によって、金属部品が膨張し、オイルが滲み出やすくなる上、オイル漏れ防止のパッキンやOリングなど、ゴム製品の劣化が進む。ポルシェ車は高い油圧をかけてやりながら走っているため、エンジンルーム内の温度が非常に高くなったりまた冷やされたりしてゴムが劣化してしまうと、オイル漏れが発生しやすくなる。
松坂氏いわく、964の90年、91年式はシリンダーとヘッドの間にガスケットがないためにオイル漏れが頻発した。しかし、氏が面倒を見た964で走行が10万キロを超える複数の初期型964には、まったくオイル漏れが見られないものもあるという。なぜかというと、それらの車は都内の渋滞をちんたら走ったり、買い物車として使われていたわけではなく、高速で大阪まで往復、とか青森まで週一度は往復していたなどの使われ方をされていたからだそうだ。つまり、多走行車であっても、エンジンルーム内がきちんと冷却されるような状況下で使われていれば、オイル漏れが起こる可能性は減る。
ということで、真夏に渋滞につかまると予想されるのであれば、車のことを思えば空冷の車では出かけるべきではないそうだ。長時間の暖機も、渋滞の中にいるのと同様に良くないらしい。夏は5分、冬は15分、それもアイドリングではなくて回転数を低めに保ちながら暖機するのが良いそうである。ちなみに外気温が高くても、平均速度を上げて走れるのであれば、それは問題ないと松本氏はおっしゃっていた。
質問2.オイルは指定ブランドを入れ続けたほうが良いのか?
結論から言うと答えはYes。理由は、オイルにはさまざまな添加剤が入っていて、メーカーによってその種類には差がある。ポルシェのオイルは11〜12リットル入っているが、オイル交換時に完全に古いオイルを排出することはできない。というわけで、オイル交換時には古いオイルと新しいオイルがどうしても混ざってしまう。その際に、高温高圧下で何らかの混合の影響が出ないとも限らない(食い合わせみたいなもので、問題ない組み合わせもあるだろうし、問題ある組み合わせもある可能性がある)。どんな条件下のどんな組み合わせが良くないのかについてだれも研究していない以上、リスクをとりたくなければ同一ブランドの同一グレードを入れつづけるというのが最良の選択だとおっしゃっていた。次善の策としては同一ブランドのグレード違いというのもおそらく問題ないとのこと。
同様に、最近はガソリンにも添加剤がいろいろと入っているため、こちらもできる限り同一の会社のものを入れたほうが良いとのこと。松本氏は最近読んだ本の中でS社のガソリンが一番良いと書いてあったと教えてくださった。理由は聞かずじまい。
質問3.ポルシェ社指定のNタイヤは何がどう違うのか?
ポルシェ社指定のNタイヤとまったく同一名を持つタイヤが実際市場で売られている。同じブランドなのにN指定とそうでないものが存在する。大きな違いは、コンパウンドの特性をポルシェ車用に指定しているのがNタイヤだそうである。私のP-ZeroはN1で、現在N3まで存在しているそうである。Nタイヤがポルシェディーラー以外で購入できないかというとそういうわけではなく、普通のショップで購入することは可能だそうだ。
質問4.洗車後に排気温警告灯が点滅することがあるが、エンジンルームに水が入ったからだろうか?
964、993ともにありがちなトラブルで、電気系の接触不良なので、ずっと点灯している場合以外は気にすることはない。そのうち自然に消えてしまう。高速のギャップで跳ねたときなども同様のことが起きる場合がある。
質問5.購入してからつい最近まで外気温計が60℃のまま変わらなかったが、最近洗車したら通常の状態に戻った。これはなぜか?
外気温センサーはフロントグリルの中にある。よく接触不良でマイナス数十度あるいは数十度を示すことがある。洗車時にたまたま接触が復活したからではないか。このセンサーの周りには放熱するものがたくさんあるため、基本的には凍結のリスクを判断するためだけにあって、気温は通常高めに表示される。
質問6.雨の日のポルシェは危険とよく言われるが、具体的には何に気をつければよいのか?
時速100km程度ではまだ大丈夫だが、120km程度から危険は急激に増える。やはりリアから滑り出す事が多い。リアが流れてカウンターで立て直そうとしているときに側壁にテールをぶつけるケースが多く、そうなると車が回転してしまってリアだけではなくいろいろなところをぶつけてしまうことが多い。4Sに関してはトラクションが前後に配分されているため横方向のタイヤの性能の限界はRRよりも高い。しかし基本的には雨の日は亀のように走るべきであるとのこと。
私はただ車検の車を引き取りに行っただけなのに、松本氏は時間を取って丁寧に説明してくださった。帰るときも車のところまで出て来て下さり、しばらく立ち話をして、「大事に乗ってやってください」とおっしゃった。こういう人が面倒をみてくれるのであれば、少々高くてもこのままディーラーで見ていただいたほうが良いのかな、と思った。
走行距離11188kmで入庫、帰ってきたときは11210kmに走行が伸びていた。帰ってくると、アイドリングが非常に安定していた上、エンジン音も小気味よく、若干音が小さくなった気がする。これで、転ばぬ先の杖となれば良いのだが。
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