日々雑感 2005年6月

度を越した車道楽オヤジは恐ろしい

会社の偉い人が今度新しい車を買うという。彼は現在自分用にS500と、奥様用にC240ワゴンを保有している。彼はどう見ても堅気の人には見えにくいので、彼が白のSクラスに乗っていると車線変更自由自在だろう。しかし、C240ワゴンが大のお気に入りで、私を捕まえては、「あれは名車なんだ、お前分かるか」とのたまわれる。私に言わせると、「いくら名車でも、あなたの見た目はCクラスのワゴンにはいかつすぎますから」(残念。)という感じである。

そんな彼が新車を買うという。あんなにCクラスのワゴンで満足している、といっていたのに、と不審に思って、何を買うのか聞いてみたら、なんとE350ワゴン4マティックアバンギャルドだという。彼いわく「四駆に乗ってみたいんだよ、あと350シリーズのエンジンって相当いいらしいじゃないか、数も出てこなれてきてるみたいだし」とのこと。言っていることはかなりエンスーぽいが、ベンツもう一台追加の上に、さらにワゴンもう一台追加である。意味が分からない。ヤナセのショールームでも始めようというのだろうか。それに小学生の女の子のいる3人家族なのに、ベンツばかり3台もあっても仕方ないではないか。その上、彼が住んでいるのは表参道の駅から至近のマンションなので、3台も駐車場を確保するのは物理的にも、資金的にもかなり大変である。本当にお金持ちの考えていることはよく分からない。

そして彼が突然やってきて、「おい、xxxx(私の名)、お前俺のS500買うんだよな、うちにもうすぐ新車がくるんだよ」とおっしゃった。新たな車が来るからもう一台駐車場確保したばかりだといっていたではないか。いくら私が「今度のセカンドカーは安寧な車がいい」と言っていたとはいえ、S500はいくらなんでもセカンドカーではあるまい、ベンツに失礼ではないか。ベンツ3台体制で行くのか、と思っていたら、やはりベンツばかり3台あってもしょうがないので(というか、最初から気付けよ、という感じだが)、さらにもう一台車を買おう、ということになっているらしい。E350だって乗り出しで1000万弱ぐらいするはずなのに。本当にお金持ちの考えていることはよく分からない。

で、もう一台の候補を聞いてみたら、「おい、ポルシェの新しいので今度4Sでるだろ、あれいいだろあれ」とのたまわれる。こちらは再び絶句である。そりゃいいに決まっている。そもそもさらに1400万近く払ってもう一台車を買いたい、というのが分からない。さらに、いくら今度四駆に乗ってみたい、と思っていたからといって、Eクラスのワゴンの四駆と997の4Sの両方を買うなんて、やはりどう考えても尋常ではないだろう。やはり。 そんな金あったら、私だったらBentleyのContinental GTを一台2000万円で買って、C240と2台体制を組むよ。だって四駆でしょ。本当に、本当にお金持ちの考えていることはよく分からない。

彼のフィアンホワイトS500は99年式の並行もので、走行は45000km程度、業者の買値は250万円程度、市場での売値は400万円程度だという。微妙な値段なので、業者の買値+50万円ぐらい払って譲ってもらうのも悪くはないかな、と最近少し思い始めた。さすがに私は車を3台も所有するほど懐に余裕はないので、アルファ号を里子に出すことになるのかもしれないが。アルファ号は2歳と4ヶ月程度、走行も1万5000km程度なのだが、多分衝撃的に中古では値下がりしているのだろう。買値は良くても150万円程度だろう。調子は最高、メンテナンスも完璧、使い方も丁寧なのだが、やはり相場はその程度だろう。

並行のベンツだと、ナンバープレートのサイズが欧州と日本では異なるのでバンパーの見た目が悪くなってしまうなあと昔から思っていた。しかしいろいろ調べてみると、99年の並行ものを最新モデルと全く変わらない外観にするキットなどが売られていてびっくりである。よく最近では街中でLorinser仕様のW220を見かけるが、結構そういった「なんちゃって」ものが多いのだろう。見た目だけ最新のものにしても、99年式だとW220が発売されてから日が浅いことで電装系のトラブルが心配だし、ATも5段だし、エアサスもへたりが来るころだし、実は買っても安寧な生活は約束されていないのではないか、という気がしてきた。しかしハッチバックではなくちゃんとトランクがあって、人が居住する空間と荷物を置く空間が隔離されている車のほうが当たり前だがComfortableだと最近強く思う。

いつも車の売却を考えるときに思うのだが、常に、「車の業者の買値<所有者が考える車の効用」、という非対称性がある気がする。たとえば私が昔乗っていたZ3の下取り価格は150万円だったが、完璧なメインテナンスとBBSの40万もしたホイール、車高調(20万ぐらい)、Super Sprintのマフラーなど(あのころは若かった)、車体本体とあわせて500万程度かけたものだった。走行が多かったのと(とはいえ高速中心だったのだが)、不人気色だった(人に「ポリバケツみたいな色だよね」といわれたこともあった)こともあって買い叩かれたが、査定をしてくれた人もお世辞かもしれないが「本当にきれいにいじってますよねー。」と低い査定をくれたときに申しわけなさそうに言っていた。今のポルシェに出会わなければ、しばらくそのまま乗り続けたと思う。少なくとも、私の中での効用は150万円より高かったことは間違いない。
また、993を今売りに出すとおそらく600万円程度の売値になると思うのだが、その値段はたとえばBMW330の新車と同じである。しかし私の中の効用が「993イコールBMW330新車」となるかというとそんなことは決して、決してない。つまり、やはり気に入った車はずっと連れ添うか、百歩譲ってもその価値が本当に分かってくれる人(=自分と同様の価値観を持つ人)に少しばかりプレミアムを払ってもらって譲り渡すしかないような気がする。

ともあれ、新たなSシリーズが発表されたばかりなのに6年落ちの並行車を買い、ハッタリの効くベンツを乗り回しているような連中と勘違いされる道を選ぶのか、アルファに乗って後部座席のゴルフクラブが触れ合う金属音といやおうなく室内に侵入してくるツインスパークの勇ましい音を聞きながら休日の午後に渋滞した都内を走ることに耐え続けるのか、難しい選択である。

最近行った旨い店

レストランの話題もしばらく遠ざかっていたので、最近行った旨い店を簡単にアップデートすることにする。

龍天門(恵比寿、ウエスティン東京)

何も言うことはない有名店。恐らく東京でも十指に入る中華料理。夏はここの冷やし坦々麺を食べるのが楽しみ。冷たいゴマのスープの上に、真っ赤なラー油がかかっていて食欲をそそる。先日どうしても中国飯店の黒酢の酢豚が食べたくなり、時間がなくて行けなかったため龍天門でメニューにないのに無理を言って作ってもらって坦々麺と一緒に食べた。有名店なのに無理を聞いてくれるところが偉い。(でも黒酢の酢豚は中国飯店で食べるのが一番旨い)

マヌエル(渋谷、ポルトガル料理)

渋谷の駅から徒歩10分弱、松濤鍋島公園に行く手前にある小さなポルトガル料理の店。とても小さな店で、思い立った時は大体テーブルが埋まっているため断られることが多く、当HPでの紹介は(自分がいけなくなったら嫌なので)差し控えていたのだが、某有名レストランガイドに出ているのでまあいいか、と思い紹介する。
ここは超お勧め。ポルトガル料理はなじみがないが、基本的に保存食である干し鱈、豚肉、アサリ、いかやたこなどの魚介類、ポテトその他の野菜を組み合わせた比較的シンプルな料理。
黙って座って、少し小柄なめがねを掛けたお兄さんにお勧めを聞くのが一番よいが、個人的に好きなのが「豚肉とアサリのアレンテージョ風(「アレンテージョ」で間違いないか100%の自信はないが)」と「豚肉のロースと海老のクリームソースがけ」。この二つの料理があれば、白ワインが進むことこの上ない。ポルトガルワインのリストも充実しているので、とても親切にしてくれるお兄さんに推薦してもらうのがよかろう。値段も極めてリーズナブル。「通りが見える窓際の席」を指定して、休日の昼下がりにワインを飲みながらゆっくり食事すると、とっても幸せな気分になる。

Violette(代々木公園、カフェ)

代々木公園の西側の大きな通りをはさんだ反対側に、二つ代々木小公園があるのだが、その北側に面するカフェ。一階がカフェになっていて、地下は美容室、というちょっと変わったセットアップ。ここで食べるカフェ飯は、カフェ飯の次元をはるかに超えたもの。はっきり行って下手なリストランテで食べる食事よりも旨い。なんでこんなに気合が入った料理が、気負わずに出てくるのか、ちょっと不思議。
ランチのプリフィクスで出てくる前菜は、野菜がとても新鮮で旨いし、メインの豚のカツレツのミラノ風などはカツの衣に薄く絡ませてあるパルミジャーノの香りと、柔らかいがしっかりとした豚の甘さが交じり合ってとても旨い。
夜も手を抜かない料理が出てくるので、ちょっと一杯、という使い方もできれば夕食をしっかり食べることができるのでとても便利。しかしカフェだと思ってお茶だけで済ませてしまうと、この店の凄さは決して理解できないだろう。
春は代々木小公園の桜が目前に広がる。犬連れでもOKなので、代々木公園で犬と遊んだ後の遅いランチを取るのがお勧め。私は休日の昼下がり、ランチを食べた後、軽く飲みながら読書してここで時を過ごすのが好きだ。

大坊珈琲店(表参道)

表参道交差点から246を赤坂方向に向いて右側、一分も経たないぐらい歩いた雑居ビルの二階にある珈琲店。喫茶店でも、コーヒー店でもなく、珈琲店。
ここで飲む珈琲はこれまでの「コーヒー」の概念を覆すほどのインパクトがある。自称コーヒー中毒で、新鮮な豆を焙煎してもらったのを毎朝豆から挽いて飲んでいる私が言うのだから間違いない。一杯一杯、ネルドリップに極細のお湯をゆっくり、三次元的に回しながら抽出したコーヒーは、全くえぐみがなく、甘い香りが漂い、まずいコーヒーを飲んだ後口に残る嫌な感じは全くない。モカを一口啜ったら、最近どこかで味わった感触とよく似ている気がして、しばらく考えたらシングルモルトのウイスキーをストレートで飲んだ感触とそっくりだということに思い当たった。コーヒーが好きな人にも、これまで嫌いだった人にも行ってみてほしい店。

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