日々雑感 2004年8月

アルファ号のオイル漏れ

アルファ号のオイル漏れについては先月ご報告したが、えらく簡単に直ってしまった。アレーゼ日本橋に入庫するのに一週間ほど時間がかかったが、日曜日に入庫したら火曜日には仕上がったとのことだった。エンジンとミッションの継ぎ目からのオイル漏れは症例が多いらしく、すぐに直ったようだった。ただ、私は知らなかったのだがエンジンのバルブのタイミングの不具合か何かでリコール対象となっていたようで、オイル周りの修理とともに対策がされたとのこと。請求書には「一般点検修理」と「オイル交換」としか書かれていなかったので、ちょっと不誠実な気がした。

最近突然セレスピードの調子が悪くなることがある。停止中に突然システム不調のエラーメッセージが出て、ギアが入らなくなるのだ。エンジンを一度切ると復活するのだが、走行中にギヤ抜けしたりしないかと不安になる。実は母がアルファ号のデザインを気に入っているので、現在親が乗っている旧型C240ステーションワゴンの後に147をあげようかとも思っているのだが、伊豆の田舎なのでディーラーもなく年寄りに預けるのは不安になる。やはりアルファは思い入れのある人が(やせ我慢とともに)乗る車なのかもしれない。走行距離が伸びないうちに入れ替えたほうがよいのだろうか??そんなことを言っていると車がへそを曲げて大体故障すると相場が決まっているのだが。

カイエンに乗る

愛車の(念のためだが993の方)オイルの交換で、初めてポルシェ目黒にお邪魔した。セールスの小塚さんが世田谷から移られた時に案内状を頂戴していたのだが、実際にお邪魔したのは始めてのことである。世田谷よりも圧倒的に我が家から便利なので、大歓迎である。早ければ10分程度で着くので、ありがたいことこの上ない。
本当であればサービスでオイル交換をお願いして、待っている間小一時間ほど渋谷のジムで運動して、車を引き取って家に帰る、というスケジュールで動こうと思っていた。しかし、車を預けたらショールームに小塚さんの顔があったのでご挨拶したら、997談義に花が咲いてしまった。

997は9月初旬に日本でデビューフェアをされるのだそうだ。8月後半にはお得意様限定でお披露目があるらしい(当然私は呼ばれていない)。ポルシェが斯様に早く新作のマーケティングを行うのは極めて異例のことだそうだ。カレラ、カレラS、ターボ、カブリオレ、4Sなどと小刻みに発売するのがこれまでのやり方だったのに、今回は(私の聞き間違えないし記憶違いでなければ)カレラSも近いうちに投入されるということだった。乗り味自体はまだわからないので、車の出来自体の議論にはならなかったが、最近のポルシェのマーケティング手法の話から、カイエンについての話で盛り上がった。

カイエンは、一目惚れした女性からの指名買いが結構あるのだという。それもこれまでSUVを運転したことがなかったような層から。大体旦那が「カイエン買いたいんだけど…」などというと、奥さんが「駐車場が小さすぎる」とか、「買い物に行ってとめられない」とか、「大きすぎて運転できない」などとけちをつけることが多いが、女性が一目惚れすると「スキーやったことがないんだけれど車買ったからチャレンジしてみようかしら」とか、「運転下手だけど頑張って慎重な運転を心がけよう」とか、買うことを決めた後に自分が買う理由を見つけ、後付け的に自己正当化を計るらしい。さもありなん。

昨年度のポルシェの新車販売台数は2760台で、一昨年度は2001台。伸び率は40%弱。それに大きく貢献したのはカイエンだったという。もちろんボクスターも売れたのだろうが。カレラ、ボクスターだとアピールする層は極めて限定的で、将来的には市場の拡大のためにはメルセデス、AMG、BMW、セルシオなどのドライバーズシートに座る人たちを取り込んでいくしかない。実際その動きは顕著で、ターボにティプトロ仕様が出たり、フェラーリにF1が出たりゴルフバッグが乗せられるようになったのもこの顧客層にアピールするためであろう。
そういう意味では、ポルシェはカイエンによってこれまでまったく訴求したことのない顧客層を取り込む努力をしているということである。ポルシェのマーケティング戦略上、具体的に取り込もうとしている顧客層はピンポイントで「メルセデスのEクラスの4Maticを検討している顧客」だそうである。高収入は言わずもがな、しっかりとした制動性能と走行安定性を求めている、アウトドア志向の顧客、ということと思われる。さすがにその層はこれまでポルシェのラインナップでは対応し切れなかった層だろう。そういう意味ではポルシェはカイエンによって新たな顧客層を切り開いたことになる。

そんな話をしていると、小塚さんが「乗ってみますか?」と薦めてくださった。V6のカイエンだった。後から知らされたのだが、試乗したのはフル装備のV6だった。ノーマルとの大きな違いはエアサス、コーナーセンサー、オプションのホイール、キセノンライトなどなど。フルノーマルだと666万円からということだが、乗った車はおそらく出来上がりで800万円程度になっていたに違いない。
乗ってみると、視点がそんなに高くなく、あまり家のアルファに乗っているのと比べて違和感がなかった。右ハンドルだったから本能的にアルファと比べてしまった。993と比べると当然アイポイントは高く、印象はまったく異なる。メーター周りもターボほどではないが993と比較できないほどInformativeだ。あと、シートの張りがしっかりしているところが大きく993と違うと感じた点。愛車のシートがへたっているだけかもしれないが。

V6なんて、と思っていたが、カタログスペックでは250馬力。アクセルを踏み込むと勇ましいエンジン音がするが、トルクは結構ある。2.4t近くの車重だが、決して遅い車でないことはわかった。エアサスでコンフォートからスポーツまでいろいろと試してみた。コンフォートでもそれなりに路面からの入力はあり、安寧な乗り味の国産のSUVから乗り換えると違和感あるかもしれない。ポルシェに乗っているのにエンジン音が前からすることがとても新鮮だった。フェラーリの456とかマラネロとかにのるV8乗りの人が感じるのと同じようなものなのだろう。ロールはあまりしない。そういう意味ではいわゆる乗用車からの乗換えでも問題は全くない気がする。

試乗車を借りているにもかかわらず、あえて恵比寿の裏道でものすごく狭い道のすり抜けに挑戦してみた。どれぐらいのサイズがあるのかを試してみたかったのだ。車両感覚はつかみやすい。側方感覚はミラーの幅で把握できる。しかしコーナーセンサーがピッピコピッピコいうので、余計緊張してしまった。乗っている感じでは自分が大きい車に乗っているとはとても思えない。とはいえ全長4.8m弱、全幅2m弱という恐ろしい大きさの車なのだが。借り物の車を傷つけないためにかなり慎重に運転したが、大阪だったら後ろの軽自動車はクラクション鳴らしっぱなしであっただろう。何とか借り物のきれいなシルバーメタリックの表面を傷めずに細い道から脱出した。

ディーラーで試乗させてもらったのは久しぶりだったが、緊張しなかったのはなぜだったのだろうと自問すると、やはりカイエンは「乗りなれた」ポルシェだったからなのではないかと思った。ドアの剛性感、ハンドルの重さ、ペダルの踏み込んだ感触、そういったものが自分の車と大きく異ならないので、乗り換えたときの違和感が極めて少なかったのかもしれない。水冷のポルシェは空冷とは別物だ、という意見もあるのかもしれないし、カレラとカイエンを比べるなんてとんでもない、とおっしゃる人も間違いなくいるとは思うが、何の先入観もなく、乗って違和感がなかったと感じた。アルファ号と買い換える、などという戯けた考えはあっけなく却下されるのだろうが。

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