オーストラリアの人は、どうやら車が好きらしい。おそらく望むと望まざるとに関わらず広大な国土の中では車無しには生きて行かれないはずなので、結果として車を愛する文化が発展したのかもしれない。初めてオーストラリアを訪れたのだが、ブリスベンからゴールドコーストまで下りてくる道すがら、随分と多くの修理工場やホイール、マフラー、エアロパーツを売っているショップを目にした。Holdenというナショナルメーカーがあるのは知っていたが、予想以上に日本車が多かった。それも、ただの日本車ではなくて、車高を下げてマフラーを変え、ピカピカのホイールを履いたチューンドカーがたくさんいたのだ。R32GTRやGTS-T、R33GTR、シルビアスペックR、ランエボ、インプレッサ、インテタイプRなどなど。日本で見るチューンドカーよりも品よくドレスアップされていて、自分が外国にいる感じがしなくてとても不思議な感じだった。
HoldenはGM傘下で、基本はOpelなのだろうが、一部オーストラリア専用モデルがあって走っている車を眺めているだけで飽きない。一番面白かったのが、おそらくVectraベースだと思われるシャーシをピックアップにしているモデル。オーストラリアの若者はこの車をベースにロールバーを入れたり、ドリルドローターでインチアップしたホイールを履いたりしていて、日本で売っても人気が出るのではないかというモデルだった。日本で売ればよいのに。
ゴールドコーストの目抜き通りをチューンアップした車がぐるぐると走り回っているのは、京都で金曜日の夜に車内をネオンライトで照らしてリフトアップしたRVが河原町通りでぐるぐる回っているのと同じでなんとなく可笑しかった。日本では考えにくいのだが、チューンアップした車やノーマルでもインプレッサなどがハイウェイを走っていても、そんなにスピードを出す車がいないのだ。M1というかなり走りやすい4車線のハイウェイを走っていても、ほとんどの車が制限速度の110km程度で流していて、日本のように右車線をものすごい勢いで走っていく車というのがほとんどいない。オーストラリアという国全体にいえることなのだが、人々がかなりMatureしている印象を受けた。余談だがオーストラリアで私が使ったトイレで汚かったところは一箇所も無く、民度の高さを実感した。
道も日本のように舗装が工事のせいでつぎはぎになっているようなところはあまり多くなく走りやすい。熱帯雨林を見に山道を走ったのだが、日本では間違いなく40km制限であろうと思われる山道が70kmの制限速度だったり、田舎道が100km制限だったりしてかなりびっくりした。但し注意すべきコーナーの直前にはカーブのRに応じて細かく安全速度を示す標識が必ずあるので、運転しやすいことこの上ない。ヘアピンコーナーなら30km、通常の中速コーナーだと60kmなどと表示されて、オーバースピードで突っ込む危険が少ないようになっている。交通量が少ない中でどうしてもスピードが乗ってしまうにも関わらず、山道では突然タイトなコーナーが出現したりするので、ドライバーにとっては極めて有り難い情報である。日本ではここまでドライバーフレンドリーな情報提供をしようという発想は恐らく無いであろう。
ドライバーフレンドリーな情報提供という意味では、街中の車線減少の標識が必ず「この先2車線まで車線減少」などと車線数を明記してあるのが大変便利に感じた。日本では車線減少の数までは指定されないので、首都高などで道を知らないドライバーが不可解な行動をとって渋滞を引き起こしているケースを散見するが、日本も見習うべきだと思った。
オーストラリアでは主要な交差点の多くがラウンドアバウト、すなわち円状の交差点に進入してぐるっと回って自分の行きたい方向の出口におのおの出て行くという方式になっていた。ラウンドアバウトにすでに進入している車に優先権があり、新たに入っていこうとする車は走ってくる車に道を譲らなければならない。慣れてくると信号よりも結構便利である。但し歩行者にはあまり優しくないが(車のことしか考えられていないので)、そもそも人の数も少ないので大きな問題にはならないようだ。
日本車の話に戻ると、もう一つ気がついたのが日本では既にヒストリックカー扱いになっている車たちがオーストラリアではまだまだ現役で走っていることである。写真が撮れれば良かったのだが、ケンメリスカイライン、私が3歳ぐらいの頃に家にあった三菱コルト、ダルマセリカなどなどが元気良く走り回っていた。15年振りの低水準にある失業率、飛ぶように売れる豪邸など、オーストラリアの景気がいいことを示す事実には事欠かず、そのせいでAMGやBMWなどの高級車、それも新車が多かったが、古い車が元気に走っているのを見ると、渋滞も少なく湿度も低いし車にとっては走りやすい環境なのだと実感した。
私が借りたレンタカーはカローラの5ドア、恐らく日本で「カローラランクス」の名前で呼ばれているものだと思う。まだ5000km走っていない新車だった。4速ATで、たぶん120馬力も無いのだと思うが、実用性が高くて不満は無かった。150万円ぐらいのプライスタグがついて売られているはずだが(もしかすると世界のトヨタはもっと安く作っているかもしれない)、バリューフォーマネーはきわめて高いと感じた。但し助手席側にはエアバッグがついておらず、あまり自信は無いがABSもついていない気がした。オーストラリアの田舎道では対向車とすれ違う際に未舗装の部分にはみ出すケースがままあるので、左側の車輪が未舗装の部分に乗っているときに緊急回避したときには恐らくスピンモードになるのではないかと思われ、ABSはあったほうがいいように感じた。サスペンションは普通なのだが、S字コーナーの切り返しなどでは伸び側の挙動が唐突なので、同乗していた愚妻も気付いて指摘したほどだった。燃費の良さはトヨタ車ならでは。かなりの距離の山道を走り、急な坂も幾つも上ったが、700km以上走って給油は1回半程度。田舎に行くとガススタンドも無いだろうから、低燃費であることの利点は極めて高い。
ガススタンドではアメリカと違い給油してからスタンドの中で代金を支払う。幾らでもガソリン入れ逃げできそうなものなのに。日本でもカードで支払うときはまずカード会社に承認を取って確認してからでないと入れてもらえない。大人の国だと思っていたが、更に言うとオーストラリアは性善説に基づいた国民性なのではないかと思った。
オーストラリアは車好きには楽しい国だった。日本の車雑誌でオーストラリアの車事情が取り上げられることはほとんど無いが、日本製チューンドカーやかっこよいナショナルモデル、ヒストリックカーなど色々楽しめたので、機会があればまた行って見たいと思う。(車だけ見に行っていたわけではなく、18ヶ月ぶりの休暇で行ったので、念のため。)
布団に入りながら、何故だか分からないが私が幼少期を過ごした茅ヶ崎の家のことを思い出した。先日たまたま10歳まで通った小学校の横を通ったからだろうか。
さらに不思議なことに、当時住んでいた家の電話番号を突然思い出した。0467-83-0XXX。広大な記憶の海から何故こんなどうでもいい情報が取り出せるのか。全くの謎である。
家人も寝静まった頃なのに、どうしてもその番号に電話をしたい衝動に駆られた。何故なら、そこに電話すると幼少の頃の自分がこたえてくれるような、そんな気がしたから。
気温も余り高くなく、新緑が目に眩しい絶好の季節が到来したので、愛車を駆って三浦三崎まで行って魚を食べることにした。湾岸線で事故渋滞6kmという表示が出ていたので、横羽線で横浜まで行って湾岸線に戻り、横横を終点まで走って134号線を走ることにした。何だか珍しくのんびりした気分だったので、首都高が渋滞していてもイライラせず、134号線が流れなくても、車窓からの風景を楽しむ余裕があった。とても綺麗な水平線を眺めながら、のんびりと車を走らせた。
剱崎、毘沙門湾を通って、三崎まで来た。港の横に車を止めさせてもらって、魚を食べに出かけた。
ふらっと入った居酒屋風の和食どころは、期待以上に魚がうまくてびっくりした。二人で大きな皿に入った刺し盛りとその他つまみっぽいものをおなかいっぱい食べて、一人4000円ぐらいの値段だった。
まだ新緑も濃く、道も混まないので、休日東京からふらっと出かけるには絶好のドライブポイントである。
大人買い、という言葉がある。意味は、子供の頃に欲しくて堪らなかったがお小遣いが足りずになかなか買えなかったものを、大人になって経済的に余裕が出ると金に糸目を付けずに欲しかったものを欲しいだけ買ってしまう、ということらしい。
まさに今回私がギターを衝動買いしてしまったのは、このパターンである。中学生の頃からロックが好きでJimmy Page(Led Zeppelinのギタリスト)に憧れて仕方なかったのだが、なぜかこの週末突然ギター屋に行きたくなり、行って十年かそれ以上ぶりにエレキギター(エレキって何だよって感じですがエレクトリックギターだとカッコつけ過ぎの様な気がしてしまうのでエレキギターで通します)を弾かせてもらったら俄然欲しくなってしまったのだ。
これが私の購入したギターである。渋谷の楽器屋を3つ巡り、そのうちのひとつに飾ってあったGibson Les Paul Standardである。このギターは、いわゆる虎目(ギター表面の木目が虎のように縞になっている)が極めてきれいに入っている、数百本に一本程度しかない貴重なものなのだ。数百本に一本なんて大袈裟だ、とお思いかもしれないが、私はきれいな虎目が入った音のいいギターを求めて、Gibsonの総輸入代理店である山野楽器本店から、御茶ノ水の主要な楽器屋から、すべて回って数百本のギターを自分の目で見て確かめたので、これが極上だと自信を持って断定できる。
左右の木目と虎目が完全に対称で、木の表面に点がない、めったに無いきれいなトップのギターである。こんないいギターを宝の持ち腐れにするわけにも行かないので、意を決してヤマハ音楽教室でロックギターを再入門することにした。GibsonのギターとMarshallのアンプを手に入れられるなんて、20年前だったらまったく信じられないことだ。しっかり練習してモノに負けないようにしなければ、と決意を新たにした。