96年式BMWZ3、私が初めて自分で購入した車を、勝手に「青猫」と呼んでかわいがっていた。96年にZ3の正式輸入が始まる前、BMWジャパン創立15周年を記念して限定で輸入されたいわゆる「Z3アニバーサリー」の中に紛れ込んでいた一匹の青い猫が、ひょんなきっかけから我が家に貰われてきた。
96年当時私は会社の研修でニューヨークにおり、Z3という車が日本で限定発売になったことを知ってはいたが、どうすることもできなかった。しかし帰国後に、本来であれば全車売れてしまっていたはずのアニバーサリーモデルにキャンセルが出たため、我が家にやってくることと相成ったのである。それは限定発売からおよそ半年近くが過ぎた、97年3月17日のことだった。
この色は正式にはアトランタブルーという。ある日、私が駒沢通りをオープントップで走っていたのを、前の会社の元上司(女性)が見て、翌日「ポリバケツ色の車運転してたでしょう」とのたまわれたことが記憶に甦る。しかし、私はこの色が一番魅力的だと思って購入した。Z3には、シルバーより、レッドより、ブラックより、この色が似合って見えた。そもそも、この色は007でボンドカーとして登場していたZ3のイメージカラーなのである。
しかし、青猫を手放し、紺ガエルことポルシェ993カレラ4Sを我が家に迎える際、私のこの色に対する思い入れは大きく傷ついた。というのも、このアトランタブルーという色が超不人気色であることがわかったからである。「シルバーであればあと30万は高く買えたのに…」と中古車屋に何度か言われたときは正直気分を害した。
ご覧頂いても、この色はそんなに悪くないはずである。いや、悪いわけがない(かなり親ばか入ってますが)。
青猫には、BBS DTM17インチを履かせ、足回りはKoniの減衰力調整式のショックとアイバッハのスプリング、エアクリーナーはRamAirの湿式クリーナー、マフラーはスーパースプリントのDTMステンレス、Nologyのハイテンションコード、タワーバーをおごっていた。芝公園のハイランダーで新車時に完璧にコーティングしていただき、車庫保管、丁寧な扱いもあって、購入から5年近く経っても、外観はほとんど新車同様であった。上の写真も、2001年1月6日に撮影したものだが、ご覧になっておわかりのとおりの美しさである。
この写真は,青猫との最後の遠距離ドライブで撮ったものである。ほぼ紺ガエルが我が家にくることが決定していたが、青猫も大事な我が家の子であったことだし、感謝の意味を込めて箱根に出かけた。箱根というのは家人のアイデアだったが,天気予報では寒波襲来が告げられていたため、私の脳裏には嫌な予感が立ち込めていた。
何とか天気は持つように思われたのも束の間、数十分後には箱根の山はこのような景色へと変化していた。
その後、箱根から御殿場に向かう国道は積雪しており,当然われわれは冬タイヤではなく、車高を下げているためチェーンも装着できず、死にそうな思いをして箱根の山を降りた。東名御殿場インター付近になっても積雪はなくならず、東名に入っても冷たい雪は横浜まで降り続いていた。青猫ちゃんとの最後のドライブは、雪景色とともに記憶されることとなった。